相続財産の調べ方

預金・不動産・株式・保険・借金まで順番に確認する方法

家族が亡くなった後は、

「何を相続するのか」

を正確に調べる必要があります。

相続財産には、

  • 預貯金
  • 現金
  • 不動産
  • 株式
  • 投資信託
  • 生命保険
  • 自動車
  • 貴金属
  • ネット銀行
  • 暗号資産

などがあります。

一方で、

  • 住宅ローン
  • カードローン
  • 消費者金融
  • 未払いの税金
  • 家賃
  • 医療費
  • クレジットカード利用分

などの借金や未払い金も確認しなければなりません。

国税庁も、相続税の申告準備として、相続人の確認、遺言書の有無、遺産と債務の確認、遺産評価などを行い、財産と債務の一覧を作成することを案内しています。


最初に結論

相続財産は、次の順番で調べると分かりやすくなります。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 自宅の重要書類を集める
  3. 通帳・キャッシュカードを確認する
  4. 銀行口座を調べる
  5. 不動産を調べる
  6. 株式・投資信託を調べる
  7. 生命保険を確認する
  8. 自動車や貴金属などを確認する
  9. ネット銀行・暗号資産などを調べる
  10. 借金や未払い金を調べる
  11. 財産一覧表を作る
  12. 相続放棄を検討する必要がないか確認する

特に重要なのは、

プラスの財産だけでなく、借金などのマイナス財産も必ず調べる

ことです。


相続財産とは

相続財産とは、亡くなった人が死亡時点で持っていた、経済的価値のある財産や権利・義務です。

国税庁では、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋、貸付金、特許権、著作権など、金銭に見積もることができる経済的価値のあるものが相続税の対象となる財産に含まれると案内しています。


相続財産を3つに分けて考える

相続財産は、次の3種類に分けると整理しやすくなります。

1.プラスの財産

  • 現金
  • 預貯金
  • 不動産
  • 株式
  • 投資信託
  • 自動車
  • 貴金属
  • 貸付金
  • 暗号資産

2.マイナスの財産

  • 銀行借入
  • 住宅ローン
  • カードローン
  • 消費者金融
  • 未払い家賃
  • 未払い医療費
  • 未払い税金
  • クレジットカード利用残高

3.相続税上、別途確認するもの

  • 死亡保険金
  • 死亡退職金
  • 一定の生前贈与財産

これらは民法上の遺産と扱いが異なることがありますが、相続税の計算では対象になるものがあります。


第1段階 遺言書を確認する

最初に遺言書がないか確認します。

探す場所

  • 自宅の金庫
  • 仏壇
  • 書斎
  • 書類箱
  • 銀行の貸金庫
  • 公証役場
  • 法務局

遺言書には、

  • 預金
  • 不動産
  • 株式
  • 貴金属

などの財産が記載されている場合があります。


自筆証書遺言を勝手に開封しない

封印されている自筆証書遺言は、勝手に開封しないでください。

家庭裁判所で検認が必要になる場合があります。

ただし、

  • 公正証書遺言
  • 法務局で保管されている自筆証書遺言

は、原則として検認不要です。国税庁も相続税申告の準備でこの点を案内しています。


第2段階 自宅の書類を集める

財産調査では、自宅に残された書類が非常に重要です。

最初に探すもの

□ 通帳
□ キャッシュカード
□ 印鑑
□ 固定資産税通知書
□ 権利証・登記識別情報
□ 証券会社からの郵便物
□ 保険証券
□ クレジットカード
□ ローン契約書
□ 借金の督促状
□ 車検証
□ 年金関係書類
□ 確定申告書
□ 源泉徴収票

これらを1か所へまとめます。


第3段階 通帳を確認する

通帳は財産調査の中心になります。

確認すること

  • 銀行名
  • 支店名
  • 口座番号
  • 預金残高
  • 定期預金
  • 毎月の入金
  • 毎月の引落し

通帳から分かること

例えば、

「○○証券」

という入出金があれば証券口座がある可能性があります。

「○○生命」

から入金があれば保険契約の手掛かりになります。

逆に、

「カードローン」

「消費者金融」

「ローン返済」

などがあれば借金の可能性があります。


過去1年程度の履歴を見る

現在残高だけではなく、少なくとも数か月から1年程度の入出金を確認します。

注目する項目

  • 配当金
  • 証券会社
  • 保険料
  • ローン
  • 定期預金
  • 家賃
  • 税金
  • 高額な振込

第4段階 銀行口座を調べる

家族が知らない銀行口座を持っていることがあります。

手掛かり

  • 通帳
  • キャッシュカード
  • 郵便物
  • メール
  • スマートフォンアプリ
  • 給与明細
  • 確定申告書

通帳がない銀行にも注意

現在はネット銀行を利用している人も多いため、

「通帳がない=銀行口座がない」

とは限りません。

スマートフォンやメールも確認します。


銀行が分かったら残高証明を取る

相続手続きでは、金融機関に死亡を伝え、

死亡日時点の残高証明書

を取得することがあります。

相続税申告や遺産分割で重要な資料になります。


第5段階 不動産を調べる

故人が、

  • 自宅
  • 土地
  • 駐車場
  • 山林
  • 農地
  • アパート
  • 別荘

などを所有している可能性があります。


不動産を確認する書類

固定資産税納税通知書

毎年市区町村から届きます。

ここから、

  • 土地
  • 家屋
  • 所在地
  • 評価額

などを確認できます。

登記識別情報・権利証

不動産取得時の書類です。

不動産売買契約書

購入した不動産を確認できます。


名寄帳も確認する

市区町村では、その人がその自治体内に所有している不動産をまとめた「名寄帳」を取得できる場合があります。

故人が不動産を持っていた可能性がある自治体へ確認します。


固定資産税がかからない土地にも注意

山林や農地など、評価額が低い不動産では固定資産税が課税されず、納税通知書に気づきにくい場合があります。

そのため、

  • 古い権利証
  • 登記書類
  • 売買契約書

も確認します。


第6段階 株式・投資信託を調べる

証券会社の口座も忘れずに確認します。

手掛かり

  • 証券会社からの郵便物
  • 配当金計算書
  • 取引報告書
  • 株主総会通知
  • スマートフォンの証券アプリ
  • 銀行口座からの入出金

上場株式だけではない

故人が、

  • 非上場会社の株式
  • 自社株
  • 持分

を持っている場合もあります。

会社経営者や元経営者の場合は特に注意します。


第7段階 生命保険を確認する

生命保険は、死亡後に家族が見落としやすい財産です。

探すもの

  • 保険証券
  • 保険会社からの郵便物
  • 通帳の保険料引落し
  • クレジットカード明細
  • 年末調整の生命保険料控除証明書

死亡保険金は相続財産と扱いが異なることがある

死亡保険金は、受取人が指定されている場合、民法上の遺産とは別に受取人固有の財産として扱われることがあります。

ただし、相続税上は一定額を超えると課税対象になる場合があります。


第8段階 自動車を確認する

自動車も相続財産です。

確認するもの

  • 車検証
  • 自動車保険
  • 駐車場契約
  • 自動車税通知書
  • ローン契約

ローンが残っている場合は、所有者名義も確認します。


第9段階 貴金属・骨董品を確認する

自宅に、

  • プラチナ
  • 宝石
  • 高級時計
  • 絵画
  • 骨董品
  • ブランド品

などがある場合があります。

高価なものは、写真を撮って一覧にします。


勝手に形見分けしない

相続人が確定する前に、

「これは私がもらう」

と持ち出すと、後でトラブルになる可能性があります。

まず財産一覧に記録します。


第10段階 貸金庫を確認する

銀行の貸金庫を利用している場合があります。

手掛かり

  • 貸金庫カード
  • 銀行の利用料
  • 契約書

貸金庫内には、

  • 遺言書
  • 権利証
  • 貴金属
  • 証券

などが入っている可能性があります。


第11段階 ネット銀行を調べる

スマートフォンに銀行アプリが入っていないか確認します。

手掛かり

  • 銀行アプリ
  • SMS
  • メール
  • クレジットカード
  • パスワードメモ

ネット銀行の預金も相続財産です。

ログインできても、勝手に送金せず、銀行の正式な相続手続きを行います。


第12段階 暗号資産を調べる

現在は、

  • Bitcoin
  • Ethereum
  • その他の暗号資産

を保有している人もいます。

探すもの

  • 暗号資産取引所アプリ
  • メール
  • ハードウェアウォレット
  • 秘密鍵
  • シードフレーズ

暗号資産も経済的価値があれば相続財産に含まれます。


第13段階 電子マネー・ポイントを確認する

主なもの

  • QRコード決済
  • 交通系電子マネー
  • プリペイド残高
  • 航空会社マイル
  • クレジットカードポイント

サービスによって相続や払戻しの可否が異なります。

規約を確認してください。


第14段階 借金を調べる

相続で最も注意しなければならないのが借金です。

主な借金

  • 住宅ローン
  • 自動車ローン
  • 銀行カードローン
  • 消費者金融
  • クレジットカード
  • 個人からの借入
  • 事業借入
  • 保証債務

国税庁でも、被相続人が死亡時に負っていた借入金や未払金など、確実な債務は相続税計算上控除できるとしています。


借金の手掛かり

自宅

  • 借用書
  • ローン契約書
  • 督促状
  • カード
  • 請求書

通帳

  • ローン返済
  • 消費者金融
  • カード会社

スマートフォン

  • ローンアプリ
  • クレジットカードアプリ
  • メール

第15段階 クレジットカードを確認する

財布の中だけでなく、

  • 通帳
  • メール
  • スマートフォン

からもカード会社を確認します。

確認すること

  • 未払い利用額
  • リボ払い
  • 分割払い
  • キャッシング
  • 年会費
  • サブスク

第16段階 保証債務を確認する

非常に見落としやすいのが、

誰かの連帯保証人になっている場合

です。

本人が直接借金をしていなくても、保証債務を負っている可能性があります。

手掛かり

  • 保証契約書
  • 金融機関の書類
  • 事業関係書類
  • 家族からの聞き取り

事業をしていた人は特に注意します。


第17段階 未払い税金を確認する

故人に、

  • 所得税
  • 住民税
  • 固定資産税
  • 自動車税

などの未払いがある場合があります。

国税庁では、被相続人が死亡時に負っていた未払い税金について、一定のものは相続税計算上の債務として控除できるとしています。


第18段階 未払い家賃・医療費を確認する

死亡時点で、

  • 家賃
  • 管理費
  • 医療費
  • 介護施設費
  • 公共料金

などが未払いになっている場合があります。

これらも一覧に記録します。


第19段階 葬儀費用を整理する

葬儀費用は、通常の借金とは異なりますが、相続税の計算では一定のものを遺産総額から差し引けます。

国税庁では、

  • 火葬・埋葬
  • 遺体・遺骨の運搬
  • 通夜など通常必要な葬儀費用
  • 読経料など

は一定条件で控除対象としています。


葬儀費用に含まれない主なもの

国税庁では、次のような費用は相続税上の葬式費用には含まれないとしています。

  • 香典返し
  • 墓石購入費
  • 墓地購入費・借入料
  • 初七日など法要費用

第20段階 故人の確定申告書を見る

故人が確定申告をしていた場合、財産調査の重要な資料になります。

分かる可能性があるもの

  • 不動産収入
  • 配当
  • 株式
  • 事業
  • 貸付金
  • 保険
  • 不動産売却

過去数年分があれば確認します。


第21段階 勤務先へ確認する

会社員だった場合は、勤務先から、

  • 死亡退職金
  • 最終給与
  • 弔慰金
  • 社内預金
  • 持株会

などが支給される場合があります。


第22段階 年金関係も確認する

年金受給者が亡くなった場合は、未支給年金が発生している可能性があります。

未支給年金は通常の相続財産とは性質が異なり、一定の遺族が自分の権利として請求します。

そのため、通常の預金とは別に整理します。


財産一覧表を作る

調査した内容は、必ず一覧にします。

プラス財産

財産金融機関・所在地金額・評価額書類
普通預金○○銀行300万円通帳
定期預金○○銀行200万円証書
自宅土地建物○○市1,500万円固定資産税通知
株式○○証券400万円取引報告書
自動車○○80万円車検証

マイナス財産

債務債権者残額書類
住宅ローン○○銀行500万円契約書
カード○○カード30万円明細
医療費○○病院5万円請求書
未払税金○○市10万円納付書

財産総額の考え方

単純化すると、

プラスの財産
- 借金・未払い金
= 実質的な財産

と考えると分かりやすくなります。

ただし、相続税では財産ごとの評価方法や控除できる債務の範囲にルールがあります。国税庁も、相続税の計算では財産の価額から一定の債務・葬式費用を控除する仕組みを示しています。


相続税が必要か確認する

相続税は、財産があれば必ずかかるわけではありません。

課税価格の合計が基礎控除額を超える場合に、相続税の申告が問題になります。

基礎控除は、

3,000万円+600万円×法定相続人の数

です。

例えば法定相続人が3人なら、

3,000万円+600万円×3人
=4,800万円

となります。


相続放棄を検討する場合

財産調査の結果、

借金の方が多い

可能性がある場合は、相続放棄を検討します。

相続放棄は原則として、

自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内

です。

そのため、財産調査はできるだけ早めに始めます。


相続放棄を考えているときに注意すること

財産を調査すること自体と、財産を処分することは別です。

慎重にする行為

  • 預金を自分の口座へ移す
  • 株式を売る
  • 車を売却する
  • 貴金属を売る
  • 暗号資産を移す
  • 高価な遺品を形見分けする

相続放棄を検討している場合は、処分する前に専門家へ相談してください。


一人暮らし・孤独死の場合

一人暮らしの家族が亡くなった場合は、財産の全体像を把握しにくい傾向があります。

最初に確認するもの

  1. 財布
  2. 通帳
  3. 郵便物
  4. スマートフォン
  5. パソコン
  6. 固定資産税通知
  7. 保険証券
  8. 確定申告書

郵便物を捨てない

孤独死の場合、室内整理を急ぐあまり郵便物をまとめて捨ててしまうことがあります。

しかし郵便物には、

  • 銀行
  • 証券会社
  • 保険会社
  • 税務署
  • 借金
  • クレジットカード

など重要な手掛かりがあります。

財産調査が終わるまでは、書類を捨てない方が安全です。


デジタル遺品も確認する

現在は、紙の通帳や郵便物がない財産もあります。

  • ネット銀行
  • ネット証券
  • 暗号資産
  • 電子マネー

故人のスマートフォンをすぐに解約・初期化しないことが重要です。


相続財産調査チェックリスト

預貯金

□ 普通預金
□ 定期預金
□ ゆうちょ
□ ネット銀行

不動産

□ 自宅
□ 土地
□ 農地
□ 山林
□ 賃貸物件
□ 別荘

投資

□ 株式
□ 投資信託
□ 債券
□ FX
□ 暗号資産

保険

□ 生命保険
□ 個人年金
□ 共済

その他

□ 自動車
□ 貴金属
□ 骨董品
□ 貸付金
□ ゴルフ会員権
□ ポイント

債務

□ 住宅ローン
□ カードローン
□ 消費者金融
□ クレジットカード
□ 未払い家賃
□ 医療費
□ 税金
□ 保証債務


財産調査のおすすめ順序

迷った場合は、

自宅の書類

通帳

銀行

不動産

証券

保険

スマートフォン

借金

一覧表作成

の順番で進めると分かりやすくなります。


よくある質問

財産調査はいつまでに行えばよいですか

明確な「財産調査だけの期限」はありません。

ただし、相続放棄は原則3か月以内なので、借金の可能性がある場合は早めに行います。


銀行口座がどこにあるか分かりません

通帳、カード、郵便物、メール、スマートフォン、確定申告書などから探します。

金融機関が特定できたら、相続窓口へ問い合わせます。


不動産があるか分かりません

固定資産税通知書、権利証、登記識別情報などを確認します。

所有している可能性がある自治体では、名寄帳の取得も検討します。


株式があるか分かりません

証券会社からの郵便物、配当金通知、銀行口座の履歴、スマートフォンアプリを確認します。


生命保険も相続財産ですか

保険契約の内容によります。

死亡保険金は受取人固有の財産となる場合がありますが、相続税上はみなし相続財産として扱われる場合があります。


借金があるか分かりません

通帳、郵便物、カード、督促状、スマートフォンを確認します。

事業者だった場合は、連帯保証債務などにも注意してください。


葬儀費用は相続財産から引けますか

相続税上は、一定の葬式費用を遺産総額から差し引けます。

ただし、墓石購入費や香典返しなどは対象外です。


専門家へ相談した方がよいケース

次の場合は、税理士・司法書士・弁護士などへ相談すると安全です。

  • 財産が多い
  • 不動産が複数ある
  • 会社経営者
  • 株式が多い
  • 暗号資産がある
  • 借金額が分からない
  • 連帯保証がある
  • 相続放棄を検討している
  • 相続人同士で争いがある
  • 相続税がかかりそう

相続財産調査でやってはいけないこと

書類を先に捨てる

財産や借金の手掛かりを失います。

プラス財産だけを見る

借金も相続対象になります。

スマートフォンをすぐ解約する

ネット銀行などが見つけにくくなります。

財産をすぐ分ける

相続人や債務が確定する前に形見分け・売却しない方が安全です。

借金を見つけてすぐ支払う

相続放棄を検討している場合は慎重に対応します。


まとめ

相続財産を調べるときは、

「現金や預金を探す」だけでは不十分です。

確認するのは、

預貯金
+不動産
+株式
+保険
+自動車・貴金属
+デジタル資産
-借金・未払い金

です。

基本的には、

遺言書確認

自宅書類

通帳

不動産

証券・保険

デジタル資産

借金

財産一覧表

という順番で進めます。

国税庁も、相続税申告の準備として、遺産と債務を調査し、一覧表を作成することを案内しています。

特に借金がある可能性がある場合は、相続放棄の期限も意識して、早めに調査を開始することが重要です。


注意事項

本記事は、日本国内における一般的な相続財産調査について整理したものです。

相続財産や相続税上の扱いは、

  • 財産の種類
  • 契約内容
  • 相続人
  • 生前贈与
  • 保険契約
  • 債務内容

などによって異なります。

財産が多い場合、借金がある場合、相続税が発生する可能性がある場合は、税理士、司法書士、弁護士などへ早めに相談してください。

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