身内が賃貸住宅で孤独死したときの手続き

地方在住の親族が、東京都内へ対応に向かう場合の流れ

身内が離れた場所の賃貸住宅で孤独死したという連絡を受けると、多くの人は、何から始めればよいのか分からなくなります。

特に、警察、葬儀、賃貸住宅、遺品整理、相続、役所の手続きが同時に発生するため、順番を間違えると、費用や責任の範囲が分からなくなることがあります。

大切なのは、慌てて部屋を片付けたり、故人の預金を使ったりせず、次の順序で進めることです。

基本的な順序は、次のとおりです。

  1. 警察や管理会社から状況を確認する
  2. 親族間で代表者を決める
  3. 葬儀社を手配する
  4. 遺体の引取りと火葬を行う
  5. 賃貸借契約と室内の扱いを確認する
  6. 相続人と財産・借金を調べる
  7. 相続するか、相続放棄するかを決める
  8. 遺品整理と部屋の明渡しを行う
  9. 年金、保険、税金、公共料金などを整理する

モデルケース

この記事では、次のような状況を想定します。

亡くなった方

  • 78歳の男性
  • 東京都内の民間賃貸アパートで一人暮らし
  • 配偶者はすでに死亡
  • 子どもは地方都市に住む長女1人
  • 年金で生活していた
  • 部屋で死亡し、数日後に管理会社が発見
  • 警察による確認が行われた
  • 遺言書の有無は不明
  • 預金、借金、家賃滞納の状況も不明
  • 賃貸借契約書や保証会社の利用状況も不明

連絡を受けた親族

  • 長女は地方都市在住
  • 高齢のため、何度も東京へ行くことは難しい
  • 親族の中では長女が中心となって対応する
  • 長女の子、つまり故人の孫が事務手続きを補助する

このような場合は、長女がすべてを一人で行う必要はありません。

長女を親族の代表者とし、電話連絡、書類整理、業者との打合せなどを、孫やほかの親族が補助する形が現実的です。


最初に覚えておくこと

すぐに部屋へ入らない

孤独死の現場は、警察の確認が終わるまで立入りを制限されることがあります。

管理会社から鍵を渡された場合でも、警察から室内への立入りが認められているかを確認してください。

また、室内に臭い、体液、害虫などが発生している場合があります。普通の服装や一般的な清掃道具だけで入ることは避け、必要に応じて特殊清掃業者へ相談します。

故人の預金を勝手に使わない

葬儀代や家賃を支払うためであっても、故人のキャッシュカードを使って預金を引き出すことには注意が必要です。

相続放棄を検討している場合、故人の財産を売却、処分、消費すると、相続を認めたと判断される可能性があります。

葬儀費用などの扱いは、金額、目的、故人の財産状況によって判断が異なるため、借金の可能性がある場合は、先に弁護士または司法書士へ相談するのが安全です。

遺品を捨てない

賃貸住宅内の家具、家電、現金、書類などは、原則として故人の相続財産です。

賃借人が死亡した場合、賃借権と室内に残された家財の所有権は相続人へ承継されます。したがって、管理会社や大家から「早く全部処分してほしい」と言われても、相続関係を確認しないまま処分してはいけません。


第1段階 連絡を受けた直後に確認すること

警察、管理会社、大家などから死亡の連絡を受けたら、まず電話で次の内容を確認します。

連絡してきた人の情報

  • 氏名
  • 所属
  • 電話番号
  • 警察署名
  • 担当部署
  • 担当者名
  • 管理会社名
  • 大家の氏名
  • 物件名と部屋番号

電話をいったん切り、警察署や管理会社の代表番号を調べて、実際の連絡であることを確認しても構いません。

死亡に関する情報

  • 亡くなった人の氏名
  • 生年月日
  • 住所
  • 発見された日時
  • 発見した人
  • 現在、遺体がどこにあるか
  • 警察の確認が終了しているか
  • 事件性の有無
  • 遺体を引き取れる状態か
  • 死体検案書などの書類は、いつ受け取れるか
  • 親族が東京へ行く必要があるか
  • 本人確認に必要な書類は何か

警察の手続きが行われている場合は、警察から案内された日時、場所、持ち物に従います。


第2段階 親族の代表者を決める

孤独死への対応では、警察、葬儀社、管理会社、役所、金融機関などから、同じ内容を何度も尋ねられます。

そのため、できるだけ早く親族の代表者を決めます。

代表者が担当すること

  • 警察との連絡
  • 葬儀社との契約
  • 管理会社との連絡
  • 書類の保管
  • 支払内容の記録
  • ほかの相続人への報告
  • 相続専門家への相談

代表者が高齢の場合は、子や孫が実務担当者となり、電話や書類整理を補助します。

ただし、孫が当然に相続人になるとは限りません。相続人と、実際に作業を手伝う人は分けて考えてください。

親族間で最初に決めること

  • 誰が代表者になるか
  • 誰が東京へ行くか
  • 葬儀をどの規模で行うか
  • 費用を誰が一時的に立て替えるか
  • 相続放棄の可能性を考えるか
  • 親族への連絡を誰が行うか

立替金、交通費、宿泊費、葬儀代などは、すべて領収書を保管します。


第3段階 東京へ行く前に葬儀社を探す

遺体を引き取れる状態になったら、一般的には葬儀社へ搬送を依頼します。

地方在住の親族が急いで東京へ向かう場合でも、現地へ着いてから葬儀社を探すのではなく、電話で数社に確認しておくと負担を減らせます。

葬儀社へ伝える内容

  • 東京都内の賃貸住宅で孤独死したこと
  • 現在、遺体が警察関係施設などにあること
  • 親族が地方在住であること
  • 火葬のみを希望するのか
  • 通夜、告別式を行うのか
  • 遺体の安置が必要か
  • 遺体の状態によって処置が必要か
  • 死亡届の提出を代行してもらえるか
  • 火葬場の予約を依頼できるか
  • 総額でいくらになるか

必ず確認する費用

  • 遺体搬送費
  • 搬送距離による追加料金
  • 安置料
  • ドライアイス代
  • 棺代
  • 遺体の処置費
  • 防臭処置費
  • 火葬料
  • 収骨容器代
  • 葬儀社の手続代行料
  • 深夜・早朝料金
  • 警察関係施設への迎え料金
  • 面会料
  • 人件費
  • 消費税
  • 追加料金が発生する条件

「一式○万円」という説明だけで決めず、見積書の項目を確認してください。

火葬だけを行う場合

通夜や告別式を行わず、安置後に火葬する方法は、直葬または火葬式などと呼ばれます。

ただし、火葬だけの場合でも、遺体搬送、安置、棺、火葬許可、火葬場の予約などは必要です。


第4段階 警察から遺体と書類を引き取る

警察から遺体の引取りについて連絡があったら、指定された場所と日時を確認します。

葬儀社にも警察署名、担当者名、引取り予定日時を伝え、葬儀社が搬送できるように手配します。

親族が準備するものの例

  • 運転免許証
  • マイナンバーカード
  • 健康保険証や資格確認書
  • 戸籍謄本
  • 故人との関係が分かる書類
  • 印鑑
  • 警察から指示された書類
  • 葬儀社の連絡先
  • メモ帳
  • 書類を入れるファイル

必要書類は状況によって異なるため、必ず担当警察署へ事前に確認してください。

死体検案書を受け取る

自宅などで亡くなり、かかりつけ医が通常の死亡診断書を作成できない場合には、死体検案書が作成されることがあります。

死体検案書は死亡届と一体になった書式で交付されることが多く、その後の死亡届、火葬、保険、年金などの手続きに使用します。

提出前にコピーを複数枚取っておくと安心です。

原本を提出した後で必要になった場合、再発行に費用や時間がかかることがあります。


第5段階 死亡届を提出する

死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出します。

提出先は、原則として次のいずれかの市区町村です。

  • 亡くなった人の本籍地
  • 届出人の所在地
  • 死亡した場所

死亡届を提出すると、火葬に必要な死体火葬許可証が発行されます。

実際には、葬儀社が死亡届の提出や火葬許可の取得を代行する場合があります。

死亡届を提出できる主な人

  • 同居の親族
  • その他の同居者
  • 家主や家屋管理人
  • 同居していない親族
  • 成年後見人など

同居していない親族も届出人になることができます。

注意点

死亡届の届出人欄に署名した人が、必ず葬儀費用や借金をすべて負担するという意味ではありません。

また、死亡届を提出しただけで、相続を承認したことになるわけでもありません。


第6段階 火葬と納骨を行う

火葬許可証が発行され、火葬場の予約が取れたら火葬を行います。

地方に先祖代々のお墓がある場合は、火葬後に遺骨を持ち帰る方法があります。

納骨先が決まっていない場合

すぐに納骨先を決める必要はありません。

次のような方法があります。

  • 親族の自宅で一時的に保管する
  • 菩提寺へ相談する
  • 一般墓へ納骨する
  • 永代供養墓へ納骨する
  • 納骨堂を利用する
  • 樹木葬を利用する
  • 散骨を検討する

遺骨を急いで処分する必要はありません。親族間で話し合い、費用と管理方法を確認して決めます。


第7段階 管理会社へ連絡する

警察と葬儀への対応が落ち着いたら、賃貸住宅の管理会社へ連絡します。

最初に確認すること

  • 賃貸借契約書の内容
  • 家賃の支払状況
  • 滞納家賃の有無
  • 保証会社の利用状況
  • 連帯保証人の有無
  • 火災保険や孤独死保険の有無
  • 室内への立入りが可能か
  • 鍵を誰が保管しているか
  • 特殊清掃が行われているか
  • 特殊清掃を誰が依頼したか
  • 原状回復費用の見積り
  • 賃貸借契約を終了する方法
  • 部屋の明渡し期限
  • 敷金の有無
  • 死後事務委任契約の有無
  • 残置物処理に関する契約の有無

賃借人が死亡しても、賃貸借契約がその場で自動的に消えて、室内の家財を大家が自由に捨てられるわけではありません。

賃借権と残置物の所有権は、原則として相続人へ承継されます。

管理会社へ最初に伝える文章例

「親族が地方在住のため、すぐにすべての判断をすることができません。現在、相続人、賃貸借契約、財産、負債の状況を確認しています。室内の物品については、相続関係が確定するまで無断で廃棄しないようお願いします。契約書、家賃の支払状況、保証会社、保険、原状回復費用に関する資料を書面でお送りください。」


第8段階 室内へ入る前に確認すること

部屋へ入れる状態になっても、すぐに家財を運び出してはいけません。

まず、室内の状況を記録します。

入室時に行うこと

  • できれば2人以上で入る
  • 管理会社に立ち会ってもらう
  • 入室前の玄関を撮影する
  • 各部屋を動画で撮影する
  • 家具や家電の配置を撮影する
  • 現金、通帳、印鑑の場所を記録する
  • 郵便物を分類する
  • 賃貸借契約書を探す
  • 借入れに関する書類を探す
  • 遺言書を探す
  • 保険証券を探す
  • エンディングノートを探す
  • スマートフォンやパソコンを保管する
  • 鍵の本数を確認する
  • 貴重品を一覧にする

持ち出す物は一覧表にする

現金、通帳、印鑑、貴金属、契約書などを持ち出す場合は、次の記録を残します。

  • 品名
  • 数量
  • 発見場所
  • 持ち出した日
  • 持ち出した人
  • 保管場所
  • 写真

相続人が複数いる場合は、全員に一覧表を共有します。


第9段階 特殊清掃を確認する

死後から発見まで日数が経過している場合、通常の清掃だけでは対応できないことがあります。

特殊清掃で行われることの例

  • 体液や汚れの除去
  • 床材や壁材の撤去
  • 消毒
  • 害虫処理
  • 臭いの除去
  • オゾン脱臭
  • 汚染物の梱包
  • 廃棄物の搬出

業者へ確認すること

  • 作業範囲
  • 清掃だけか、解体まで行うか
  • 遺品整理を含むか
  • 廃棄物処理を誰が行うか
  • 追加料金の条件
  • 消臭後に再作業が必要な場合の費用
  • 原状回復工事との区分
  • 作業前後の写真をもらえるか
  • 保険が使えるか
  • 管理会社指定業者でなければならないか

管理会社が先に特殊清掃を依頼している場合は、誰の名義で契約したのか、費用を誰へ請求する予定なのかを確認します。

親族がその場で「すべて支払います」と約束することは避けてください。


第10段階 相続人を確認する

故人の財産や借金を引き継ぐ人を、相続人といいます。

遺言書がない場合、民法上の相続順位に従って相続人が決まります。

一般的には、配偶者は常に相続人となり、配偶者以外は次の順序で相続人になります。

  1. 父母などの直系尊属
  2. 兄弟姉妹

先順位の相続人がいる場合、後順位の人は相続人になりません。

正確な相続人を確定するには、故人の出生から死亡までの戸籍を取り寄せて確認します。

モデルケースの場合

亡くなった男性には配偶者がおらず、長女が1人いるため、原則として長女が相続人になります。

ただし、戸籍を調べた結果、認知した子、養子、前婚の子などが判明することもあります。

そのため、「自分しか相続人はいない」と思っても、戸籍による確認が必要です。


第11段階 遺言書を確認する

室内、貸金庫、法務局、公証役場などに遺言書がないか確認します。

自宅で自筆の遺言書を発見した場合

封がされた遺言書を、親族だけで開封しないでください。

法務局の遺言書保管制度を利用したものを除き、自筆証書遺言などは家庭裁判所で検認が必要になる場合があります。

確認する場所

  • 仏壇
  • 金庫
  • 書類箱
  • 机の引出し
  • 通帳と印鑑の保管場所
  • エンディングノート
  • 弁護士や司法書士の名刺
  • 公証役場からの書類
  • 法務局からの書類

第12段階 財産と借金を調べる

相続放棄をするかどうかを判断するため、財産と借金を調べます。

プラスの財産

  • 預貯金
  • 現金
  • 株式
  • 投資信託
  • 生命保険
  • 不動産
  • 自動車
  • 貴金属
  • 売掛金
  • 貸付金
  • 敷金返還請求権
  • 未支給年金
  • 税金の還付金

マイナスの財産

  • 銀行や消費者金融からの借入れ
  • クレジットカードの未払金
  • 家賃滞納
  • 医療費
  • 税金
  • 公共料金
  • 携帯電話料金
  • 通販代金
  • 連帯保証債務
  • 原状回復費用
  • 損害賠償請求
  • 個人間の借金

室内で確認する書類

  • 預金通帳
  • キャッシュカード
  • クレジットカード
  • 請求書
  • 督促状
  • 裁判所からの郵便
  • 税務署からの郵便
  • 固定資産税通知書
  • 証券会社からの書類
  • 生命保険証券
  • 年金通知書
  • 家賃の領収書
  • 保証会社からの書類
  • ローン契約書

封筒や郵便物はすぐに捨てず、送付元ごとに分類します。


第13段階 相続するか、相続放棄するかを決める

相続人には、主に次の選択肢があります。

単純承認

財産も借金もすべて引き継ぐ方法です。

相続放棄

財産も借金も引き継がない方法です。

限定承認

相続した財産の範囲内で借金を負担する方法です。

限定承認は、原則として相続人全員で行う必要があり、手続きも複雑です。

相続放棄は、自己のために相続が始まったことを知ったときから、原則3か月以内に、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。

モデルケースでは故人の最後の住所が東京都内であるため、故人の住所を管轄する東京の家庭裁判所が申述先となります。

相続放棄の申述書は郵送で提出することも可能です。

3か月で判断できない場合

財産や借金の調査が終わらず、3か月以内に判断できない場合は、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てられる場合があります。

何もしないまま期間を過ぎると、財産と借金をすべて引き継ぐ単純承認と扱われる可能性があります。

相続放棄を検討する場合に避ける行為

  • 故人の預金を私的に使う
  • 家具や家電を売却する
  • 貴金属を自分の物にする
  • 車を売る
  • 借金を故人の財産から一部だけ返す
  • 遺産を相続人同士で分ける
  • 高価な遺品を無断で持ち帰る
  • 故人名義の契約を自分名義へ変更する

保存のために貴重品を一時的に保管する場合でも、写真と一覧表を作成し、勝手に使用しないようにします。


第14段階 賃貸借契約を終了させる

相続する場合、賃借人としての地位も相続の対象になります。

そのため、相続人と大家または管理会社が合意し、賃貸借契約の終了手続きを進めます。

確認する書類

  • 賃貸借契約書
  • 更新契約書
  • 重要事項説明書
  • 保証会社との契約書
  • 火災保険証券
  • 家賃の支払履歴
  • 敷金の預り証
  • 死後事務委任契約書
  • 残置物処理に関する契約書

国土交通省と法務省は、単身者の死亡後に賃貸借契約の解除と残置物処理を円滑に行うためのモデル契約条項を公表しています。ただし、この契約がすべての賃貸借契約に自動的に付いているわけではありません。

故人が生前に同様の契約を結んでいた場合は、指定された受任者が契約終了や残置物処理を行える可能性があります。


第15段階 原状回復費用を確認する

孤独死があった部屋では、通常の退去より高額な清掃費や修繕費を請求されることがあります。

ただし、管理会社から提示された金額を、親族がその場ですべて認める必要はありません。

書面で求めるもの

  • 室内写真
  • 汚損箇所の説明
  • 特殊清掃の見積書
  • 特殊清掃の請求書
  • 原状回復工事の見積書
  • 工事項目ごとの単価
  • 保険による補償額
  • 敷金の精算書
  • 家賃滞納額
  • 明渡しまでの家賃または使用料
  • 請求の法的根拠
  • 賃貸借契約書の該当条項

分けて考える費用

次の費用は、一括にせず分けて確認します。

  • 未払い家賃
  • 契約終了までの家賃
  • 特殊清掃費
  • 消臭費
  • 家財撤去費
  • 通常の原状回復費
  • 死亡によって生じた特別な修繕費
  • 近隣対応費
  • 残置物保管費
  • 鍵交換費

請求額が高額な場合は、賃貸住宅問題に詳しい弁護士へ相談します。


第16段階 保証会社と保険を確認する

賃貸住宅では、保証会社や保険によって一部の費用が補償されることがあります。

確認する可能性がある補償

  • 滞納家賃
  • 原状回復費用
  • 特殊清掃費
  • 遺品整理費
  • 残置物撤去費
  • 空室期間の家賃損失
  • 葬儀費用
  • 遺体搬送費

ただし、契約内容によって補償範囲は異なります。

「孤独死保険があるので、遺族の負担は一切ない」とは限りません。

保険金が大家へ支払われる契約なのか、入居者側へ支払われる契約なのかも確認します。


第17段階 遺品整理を行う

相続することが決まった場合、相続人の合意を得て遺品整理を進めます。

遺品を4つに分ける

1.必ず保管するもの

  • 現金
  • 通帳
  • 印鑑
  • 身分証明書
  • 戸籍関係書類
  • 契約書
  • 保険証券
  • 不動産関係書類
  • 借入れ関係書類
  • 税金関係書類
  • 遺言書
  • スマートフォン
  • パソコン
  • 貴金属

2.親族で形見分けするもの

  • 写真
  • 手紙
  • 時計
  • 衣類
  • 趣味の品
  • 思い出の品

形見分けは、相続人が複数いる場合、全員の了承を得てから行います。

3.売却を検討するもの

  • 貴金属
  • 骨董品
  • 家電
  • コレクション
  • ブランド品

売却代金も相続財産です。

4.処分するもの

  • 使用できない家具
  • 汚染された寝具
  • 日用品
  • 食品
  • 再利用できない衣類
  • 一般廃棄物

家庭から出た不要品を業者へ処分させる場合は、適切な許可や自治体との関係を確認します。

「無料回収」「何でも格安処分」などの広告だけで業者を決めないようにします。


第18段階 部屋を明け渡す

遺品整理、清掃、必要な修繕が終わったら、管理会社と明渡し確認を行います。

明渡し時の確認事項

  • 家財が残っていないか
  • 電気、ガス、水道を止めたか
  • 郵便物の転送手続きをしたか
  • 冷蔵庫の中を空にしたか
  • 鍵をすべて返したか
  • 室内写真を撮影したか
  • メーターを撮影したか
  • 管理会社立会いの記録があるか
  • 退去確認書の内容に誤りがないか
  • 敷金精算の予定日
  • 最終的な請求書の送付先

内容に納得できない書類へ、その場で署名する必要はありません。

「確認して後日返答します」と伝え、書類を持ち帰ります。


第19段階 電気・ガス・水道などを止める

部屋の明渡し時期が決まったら、各契約先へ連絡します。

主な契約

  • 電気
  • ガス
  • 水道
  • 固定電話
  • 携帯電話
  • インターネット
  • NHK
  • 新聞
  • 動画配信サービス
  • 通販の定期購入
  • クレジットカード
  • 家賃保証サービス
  • 見守りサービス

死亡日時点で未払いの料金は、故人の債務として扱われる可能性があります。

相続放棄を検討している場合は、親族個人の名義で支払うと約束する前に専門家へ相談してください。


第20段階 健康保険の手続きを行う

故人が国民健康保険に加入していた場合は、住所地の市区町村へ確認します。

国民健康保険の資格喪失などの届出は、原則として14日以内とされています。

確認するもの

  • 資格確認書
  • マイナ保険証の利用状況
  • 後期高齢者医療制度
  • 限度額適用認定証
  • 介護保険証
  • 葬祭費の支給
  • 高額療養費の未請求分
  • 保険料の過不足

自治体によって必要書類や葬祭費の金額が異なるため、故人の住所地の区役所へ確認します。


第21段階 年金の手続きを行う

年金を受給していた人が亡くなった場合、年金の停止や未支給年金の確認を行います。

日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合、年金受給権者死亡届は原則として省略できます。

届出が必要な場合は、原則として10日以内、国民年金は14日以内とされています。

未支給年金

亡くなった月分までの年金で、まだ支払われていないものがある場合、生計を同じくしていた一定範囲の遺族が請求できる場合があります。

未支給年金を請求できる人は、単なる相続人とは範囲が異なるため、年金事務所へ確認します。


第22段階 介護保険や福祉サービスを止める

高齢者の場合は、次の手続きも確認します。

  • 介護保険資格の喪失
  • 介護保険証の返却
  • ケアマネジャーへの連絡
  • 訪問介護の終了
  • 配食サービスの終了
  • 見守りサービスの終了
  • 福祉用具レンタルの返却
  • 生活保護担当部署への連絡
  • 高齢者住宅サービスの終了

福祉用具が室内にある場合、故人の所有物ではなくレンタル品の可能性があります。

遺品整理業者に処分させる前に、事業者名を確認してください。


第23段階 金融機関と生命保険を確認する

銀行は、預金者が死亡したことを知ると、口座の取引を制限することがあります。

口座の残高は、相続手続きによって払い戻します。

銀行へ確認する前に用意するもの

  • 故人の戸籍
  • 相続人の戸籍
  • 相続人の印鑑証明書
  • 通帳
  • キャッシュカード
  • 遺言書
  • 遺産分割協議書
  • 法定相続情報一覧図

必要書類は金融機関によって異なります。

生命保険

生命保険証券や保険会社からの郵便物がある場合は、保険会社へ連絡します。

死亡保険金の受取人が指定されている場合、保険金は受取人固有の財産として扱われることがあります。ただし、税務上の扱いは別に確認が必要です。


第24段階 準確定申告を確認する

故人に確定申告が必要な所得があった場合、相続人は準確定申告を行います。

準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

準確定申告が必要になる可能性がある例

  • 不動産収入があった
  • 事業収入があった
  • 給与を2か所以上から受けていた
  • 多額の医療費控除を受ける
  • 株式の利益があった
  • 年金収入などにより申告が必要だった
  • 前年分の申告をしていなかった

年金だけで生活していた場合でも、申告が必要かどうかを税務署または税理士へ確認します。


第25段階 相続税を確認する

相続財産が基礎控除額を超える場合などは、相続税の申告が必要です。

申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。

賃貸住宅で一人暮らしをしていたからといって、財産が少ないとは限りません。

地方に土地を所有していたり、株式、生命保険、古い預金口座などが見つかったりすることもあります。


手続き期限の早見表

できるだけ当日から数日以内

  • 警察から状況を確認する
  • 親族の代表者を決める
  • 葬儀社を手配する
  • 管理会社へ連絡する
  • 室内の無断処分を止める
  • 遺体の引取り方法を確認する

7日以内

  • 死亡届を提出する
    ※死亡の事実を知った日から原則7日以内。

10日・14日以内を目安に確認

  • 年金受給権者死亡届
    ※届出が必要な場合は原則10日以内、国民年金は14日以内。マイナンバー登録済みの場合は原則省略できます。
  • 国民健康保険などの資格喪失手続き
    ※原則14日以内。

3か月以内

  • 相続放棄
  • 限定承認
  • 必要に応じて熟慮期間の伸長申立て

相続放棄は、自己のために相続が始まったことを知ったときから、原則3か月以内です。

4か月以内

  • 準確定申告
    ※申告が必要な場合。

10か月以内

  • 相続税の申告と納税
    ※相続税の申告が必要な場合。

地方在住の親族が東京へ行く回数を減らす方法

地方から東京都内へ何度も移動することは、高齢者にとって大きな負担です。

次のように役割をまとめると、移動回数を減らせます。

第1回目の上京で行うこと

  • 警察への対応
  • 遺体と書類の確認
  • 葬儀社との打合せ
  • 火葬
  • 管理会社との面談
  • 賃貸借契約書の受取り
  • 室内状況の確認
  • 貴重品と重要書類の保全
  • 特殊清掃の確認

地方へ戻ってから行うこと

  • 戸籍の収集
  • 相続人の確認
  • 財産と借金の調査
  • 弁護士や司法書士への相談
  • 相続放棄の申述
  • 年金や保険の手続き
  • 金融機関への照会
  • 遺品整理業者の比較
  • 管理会社との書面交渉

第2回目の上京で行うこと

  • 遺品整理
  • 形見分け
  • 室内の最終確認
  • 管理会社との退去立会い
  • 鍵の返却

郵送や代理で対応できること

  • 戸籍の取得
  • 相続放棄の申述
  • 一部の年金手続き
  • 金融機関の相続書類
  • 税務手続き
  • 管理会社との書類交換
  • 専門家への依頼

相続放棄や熟慮期間の伸長申立ては、必要書類を郵送できる場合があります。


管理会社から請求を受けた場合の対応

管理会社から、特殊清掃費、家賃、原状回復費などの支払いを求められた場合は、すぐに支払うと返答せず、次のように伝えます。

「請求内容を確認するため、賃貸借契約書、費用の明細、室内写真、見積書、請求の根拠となる契約条項を郵送またはメールでお送りください。現在、相続財産と債務を調査しており、相続放棄を含めて検討しているため、現時点では支払いを確約できません。」

確認せずに言わない方がよい言葉

  • 「全部こちらで払います」
  • 「家財は全部捨ててください」
  • 「相続人は私だけです」
  • 「借金も引き受けます」
  • 「故人の預金から払います」
  • 「どのような工事でも構いません」
  • 「見積りは不要です」

口頭でのやり取りは、日時、相手、内容をメモします。

重要な内容はメールや書面で確認します。


相続放棄をする場合の賃貸住宅への対応

相続放棄をすると、原則として、その人は初めから相続人ではなかったものとして扱われます。

ただし、相続放棄をする予定だからといって、何の連絡もせず部屋を放置してよいとは限りません。

相続放棄を検討中に行うこと

  • 管理会社へ検討中であることを伝える
  • 室内の無断処分をしないよう求める
  • 財産を使用、売却、分配しない
  • 貴重品を保全した場合は記録する
  • 相続放棄の期限を確認する
  • 次順位の相続人を確認する
  • 弁護士または司法書士へ相談する

故人の子が相続放棄すると、故人の父母、父母が死亡していれば兄弟姉妹など、次順位の人が相続人になる可能性があります。

そのため、相続放棄をした人は、次に相続人となる可能性がある親族へ知らせることが望まれます。


連帯保証人になっている場合

親族が故人の賃貸借契約の連帯保証人になっている場合は、相続放棄をしても、連帯保証人としての責任が当然になくなるとは限りません。

相続人としての責任と、連帯保証契約に基づく責任は別の問題です。

確認すること

  • 連帯保証契約を実際に結んでいるか
  • 保証人か、緊急連絡先だけか
  • 保証会社が付いているか
  • 保証の上限額
  • 契約更新時の書類
  • 請求されている費用の範囲
  • 保証契約の有効性

緊急連絡先として名前を書いただけであれば、通常は連帯保証人と同じではありません。

管理会社から請求された場合は、契約書の写しを求めます。


高齢の親族が一人で対応しないための分担例

長女が行うこと

  • 葬儀内容の最終判断
  • 親族への連絡
  • 形見分けの判断
  • 相続方針の決定

孫が行うこと

  • 警察や管理会社との電話
  • 葬儀社の比較
  • 書類のコピー
  • 郵便物の分類
  • 費用一覧表の作成
  • メールでの連絡
  • 専門家の予約
  • 東京への付き添い

専門家へ依頼すること

  • 相続人調査
  • 戸籍収集
  • 相続放棄
  • 借金調査
  • 賃貸住宅の高額請求への対応
  • 遺産分割協議書の作成
  • 準確定申告
  • 相続税申告

すべてを一つの業者へ任せるのではなく、法律は弁護士・司法書士、税金は税理士、遺品整理は遺品整理業者というように、役割を分けて依頼します。


必要書類チェックリスト

警察・葬儀関係

□ 親族の本人確認書類
□ 故人との関係が分かる戸籍
□ 死体検案書または死亡診断書
□ 死亡届
□ 火葬許可証
□ 葬儀社の見積書
□ 葬儀費用の領収書
□ 火葬後に交付された書類

賃貸住宅関係

□ 賃貸借契約書
□ 更新契約書
□ 保証会社契約書
□ 火災保険証券
□ 敷金関係書類
□ 家賃支払履歴
□ 室内写真
□ 特殊清掃見積書
□ 原状回復見積書
□ 退去確認書
□ 鍵の返却記録

相続関係

□ 故人の出生から死亡までの戸籍
□ 故人の住民票の除票
□ 故人の戸籍の附票
□ 相続人の戸籍
□ 相続人の住民票
□ 相続人の印鑑証明書
□ 遺言書
□ 財産一覧表
□ 借金一覧表
□ 相続放棄申述書類
□ 遺産分割協議書

財産・契約関係

□ 預金通帳
□ キャッシュカード
□ 印鑑
□ クレジットカード
□ 保険証券
□ 年金証書
□ 証券会社の書類
□ 借入契約書
□ 税金関係書類
□ 公共料金の請求書
□ 携帯電話契約書
□ インターネット契約書


費用記録表

孤独死への対応では、支出が重なります。

次の項目を一覧にし、領収書を保管してください。

日付支払先内容金額支払った人領収書
〇月〇日葬儀社遺体搬送費〇円長女あり
〇月〇日葬儀社火葬費用〇円長女あり
〇月〇日鉄道会社東京までの交通費〇円あり
〇月〇日清掃会社特殊清掃費〇円未払い見積書
〇月〇日管理会社未払い家賃〇円未払い請求書

誰が何を立て替えたかを記録しておくと、相続人間の精算がしやすくなります。


失敗を防ぐための重要事項

してはいけないこと

  • 警察の許可なく現場へ入る
  • 管理会社の言うまま家財をすべて捨てる
  • 故人の預金を自由に引き出す
  • 高価な遺品を親族だけで分ける
  • 借金の一部だけを故人の財産から支払う
  • 請求書を確認せず支払いを約束する
  • 相続放棄の3か月を過ぎる
  • 連帯保証人と緊急連絡先を混同する
  • 特殊清掃と原状回復を同じ費用として扱う
  • 口頭だけで管理会社と合意する

必ず行うこと

  • 担当者名を記録する
  • 室内を写真で残す
  • 支出の領収書を保管する
  • 相続人を戸籍で確認する
  • 財産と借金を一覧にする
  • 相続放棄の期限をカレンダーに書く
  • 管理会社から書面を受け取る
  • 高額請求は専門家へ相談する
  • 高齢の親族を一人で現場へ行かせない

困ったときに相談する専門家

弁護士

  • 管理会社から高額請求された
  • 損害賠償を請求された
  • 連帯保証人として請求された
  • 相続人同士で争いがある
  • 借金が多い
  • 相続放棄と部屋の処理を同時に相談したい

司法書士

  • 戸籍を集めたい
  • 相続人を確認したい
  • 相続放棄の書類作成を相談したい
  • 不動産の相続登記が必要
  • 法定相続情報一覧図を作りたい

税理士

  • 準確定申告が必要か分からない
  • 相続税がかかる可能性がある
  • 株式や不動産がある
  • 故人が事業を行っていた

行政書士

  • 契約解約などの死後事務を整理したい
  • 遺産分割協議書などの書類作成を相談したい
  • 自動車の名義変更を行いたい

専門家によって扱える業務範囲が異なります。紛争や請求への交渉が必要な場合は、弁護士へ相談してください。


まとめ

身内が賃貸住宅で孤独死した場合は、葬儀だけでなく、警察、賃貸借契約、特殊清掃、遺品整理、相続、借金、年金、保険、税金など、多くの手続きが同時に発生します。

しかし、すべてを一度に終わらせる必要はありません。

まずは、次の5点を優先してください。

  1. 警察から正確な状況を確認する
  2. 葬儀社を手配し、遺体の引取りと火葬を行う
  3. 管理会社へ、室内の物を勝手に処分しないよう伝える
  4. 故人の財産と借金を調べる
  5. 相続放棄の3か月の期限を忘れない

地方在住の親族が対応する場合は、東京へ行く作業をまとめ、郵送、電話、オンライン相談、専門家への依頼を組み合わせることで、移動の負担を減らせます。

特に、借金、家賃滞納、高額な原状回復費、連帯保証契約がある場合は、親族だけで判断せず、早い段階で法律の専門家へ相談することが重要です。


注意事項

本記事は、一般的な手続きの流れを分かりやすく整理したものです。

実際の責任範囲や必要な手続きは、死亡状況、賃貸借契約、相続人、連帯保証契約、保険、室内の状態、財産や借金の内容によって異なります。

相続放棄、高額な原状回復費、損害賠償、連帯保証債務などが関係する場合は、弁護士、司法書士、税理士などの専門家へ確認してください。

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